3度目ともなると、もういい加減慣れてきた。

 深く深く息を吐き、とりあえず取り出した携帯のGPSを起動。


 やはり、反応無し。


 一応世界のどこにいても使える用にいじくってあるし、充電も満タンなんだけど。


 ってことはやっぱり、


「・・・・・・・・・・・・異世界か」


 ぽつりと呟いた言葉を肯定するように、がさりと前方の草むらが揺れ顔を出したのは・・・・・・・・・・・・・・・スライム?


 あー・・・・今度はドラクエシリーズのどれかか?

 俺FF派だったからあんまり知らねーんだけど、ま、別にいいか。


 屈んで猫を呼ぶように指を動かせば、きょとんとした後おそるおそる近づいて来た。

 お、意外と人懐っこいかもと思いながらにっこり笑顔を向ければ、スライムもパっと表情を明るくした。


 目の前に来たそいつに触れてみれば、何とも言えないプニプニもにもに。


(・・・・・・・・いい感触)


 持ち上げて掌で転がすようにもにょもにょ遊んでたら、不意に感じた気配。

 視線をスライムから外し、正面に向けるけど・・・・・気配だけで何もない。


(なにか・・・・・来る?)


「ぴぎー」


 スライムも何か感じたのか、先ほどまでの楽しそうな雰囲気から一変、不安そうに身を縮こまらせている。


「!」

「ぴぎっ!」


 唐突に、目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。

 反射的に後ろに下がり、いつでもどのように対応できる様に姿勢を低く構えれば・・・・


「なっ」


 歪みから放り出されるように人が一人。

 どさりと地面に落ちたとたん歪みは消え、何事もなかったかのようにあたり一帯の雰囲気は元に戻った。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 空間移動の魔法か能力の一種?

 にしては、出てきた当人は気絶してるし・・・・・・・・。

 もしかして俺と同じ異世界からのトリッパー?


 ・・・・・・・・・・考えてもわからねぇ事は本人に聞けばいいか。

 一応周囲の気配を確認し、警戒しつつ倒れ込んでいる人影に近寄りとりあえず顔を確認。


「・・・・・・・・・・知らない顔だな」


 赤毛の長髪に、白い服。

 腰に剣を佩いていることから、少なくとも戦闘可能な力を持つと推測。


 ざっと見た限り電子機器の類は持っていない。

 マテリアのような分かりやすいアイテムも持っていない。


 年齢的には10代後半くらいか。


「おい、起きろ」


 一先ず声をかけてみた。

 でも反応なし。


「おい、起きろって」


 今度は頬を軽く叩きながら声をかけてみた。


「・・・・・う・・・・ん」


 反応はあったけれど、覚醒までは至らなかったみたいだ。


 ・・・・・・・・・・・・・・ここでヒソカ(弟)みたいに殺気で起こすのは、流石に駄目だよな。


「ぴぎー」

「・・・・・・・・・」


 存在をすっかり忘れていたスライムがもにょもにょと動いた。


「・・・・・・・・・・・・」

「ぴぎー?」


 顔の上に置いてみた。

 俺のじゃないぜ?

 赤毛の少年の、だ。


「・・・・・・・・・・・」

「ぴぎー」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「ぴぎぴぎ」

「・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・〜〜〜〜〜っ〜・・・・・・・!」

「・・・・・・・・・・・」

「ぴぎー?」

「・・・・・・・・・・〜〜〜っ〜・・・・・・・・・・・・・・〜〜〜〜〜〜〜〜っ!・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・っ・・・・んぶはっ!!!

「ぴぎ〜〜〜っ」


 文字通り、飛び起きた少年。

 その勢いで飛んで行きそうだったスライムを寸前で保護し、オレの肩の上に避難させる。


「よぅ、起きたか少年」

「ぜぇっ、はぁっ・・・・・な、なにすんだよっ!殺す気か!?」

「いやまさか。起きないから強硬手段を用いただけで」

「もう少し穏便な方法があるだろっ!?」

「今のが一番穏便だ」

「嘘つけぇっ・・・・って、誰だアンタ!?!?!」


 なんというか、こうも反応がいい相手って久しぶりでやりとりが楽しいな。

 ついつい頬が緩んでにやにやしてたら、ようやく俺が知らない奴だと気付いた少年が勢いよく振り向いた。


「俺はだ。名前で呼ばれるのは慣れてないからって呼んでくれ。お前さんは?」

「え…お、俺はル、ルークだ・・・・・」

「ルルーク?」

「ルーク!」

「ははっ、冗談だって。ルークな、いい名前じゃないか」

「う・・・ど、どうも」


 名前を褒めれば顔を赤くして俯くルークは、なんてーか初々しい反応で癒される。

 思わず頭を撫で撫で。


「ぅわっ、何だよいきなり!」

「いや、なんとなく」


 このぐらいの年頃の少年なら頭を撫でられるなんて嫌がりそうだけど、ルークは違うようだ。

 見知らぬオレに撫でられてることの困惑はあるようだけれど、少し嬉しそう。



 だけどそろそろ互いの状況を話さなければな。

 初めはやはり、ルークがどこの世界の人間かだ。


「さて、唐突で悪いがルーク、君はこの子に見覚えはあるかい?」


 そう言って指差すのは、オレの肩に乗っかったままのスライム。

 ルークは一瞬キョトンとし、オレの指す方を辿るように視線を移し、スライムにたどりついたとたん


「・・・・・ミラクルグミに顔が出来てる・・・・」

「は?」

「ぴぎー」








No one knows what may followed










 グミってなんだ・・・・・・?














タイトルお借りしました→『鴉の鉤爪』様

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