つい数時間前まで結構殺伐とした世界にいた俺としては、ルークの純粋な子供っぷりはもう凄い癒し効果がある。


 正直言うならもっと戯れていたかったけれど、今はこの世界を知ることが先だと当初の目的である換金所を探すことにした。


 ・・・・・・と言っても、この世界に不慣れな俺たちが探しまわったところで掛かる時間がもったいない。

 なのでてっとり早く近くにいた人に聞いてみれば、百貨店の中なら換金も買い物もできるから言ってみな、と勧められたのだけど・・・・。


(百貨店・・・・・・・なんかアドバルーンと言い言語と言い、凄いミスマッチ・・・・・・)


 ちなみに百貨店の場所はアドバルーンの上がってる城みたいな建物らしい。

 分かりやすくて結構。


「そう言えば、世界って違ってても言葉通じるんだな」

「ん?・・・・・・・そういやそうだな」


 百貨店までの道のりを歩いてる途中でルークにそう指摘され、今まで特になんとも思っていなかった事実に気付かされた。


(てか、最初もその次もこの世界もある意味知った世界だったしな・・・・)


「俺はフォニック語喋ってるつもりだけど、は何をしゃべってるんだ?」

「んー、日本語・・・・かな?」

「・・・なんで疑問系?」

「ちょいと特殊な体質でな。説明すると長くなるから今は省くが、あー、多分、日本語だ。」

「ふーん。文字は違うのに、言葉は同じって変なの」

「たしかに」


 でも通じないよりかは便利だからいいさ。

 それに、今それを考えても答えが出るとは思えないしな。






ア・ロング・ロング・デイ -参-








 到着した百貨店は、近くで見ればますます違和感バリバリだった。


「なんか・・・・すげぇ・・・古くせぇ

「あー、ルーク?そーいう事は思っても口にしないのがマナーだぞ」

「えっ、あっ、ごめん」

「いやいや、まぁ、俺も実は同じこと思ってるから・・・・な」


 ルークの素直すぎる言葉に苦笑しながら同意すれば、きょとんとしたあと満面の笑みが返ってきた。

 ・・・・・・・・なんでだ?


「早く中入ろうぜっ!」

「あ、ああ・・・」


 今にもスキップしそうなほど上機嫌なルークに首をかしげつつ、まぁいいかと気持ちを切り替え足を動かした。


 そして中に入ってみれば、換金所は結構あっさり発見。

 念で空間を増したベルトポーチから適当な宝石を二つ取り出し、周囲に置かれてる商品と商品の価格を見比べおおよその物価を予想。

 次に取り出した宝石の価格を思い出しながらカウンターの男に換金を申し入れれば笑顔で迎えられた。


(ぼったくられない様にしねぇとな)


 適当に取り出した宝石の価値は、まぁそこそこ、だったんだが・・・・、


「お、お客さん、この宝石をどこで手に入れられたのですか・・・・!?」


 なんかすげー驚かれてるんだけど。


「以前寄った街で気に入って買ったんだが、それがどうかしたか?」

「い、いえ・・・・・あの、本当に売却させて頂いてもよろしいのでしょうか?」

「じゃなきゃ持ってこねーって」


 早くしてくれと溜息をつけば、慌てて金額を提示された。

 値段は・・・・・・・・760,000Gゴールド

 妥当・・・・・・・・か?


 金額を提示した男からはぼったくろうって感情伝わってこないし、まぁあの程度の宝石ならまだごろごろあるから良いか。


 ってわけで了承したら、なんかすごい量の袋がどさどさどさ。


 横にいるルークがぎょっとしてる。


 俺もぎょっとしてる。


(・・・・・・・なるほど、この世界の通貨は一種類だけなのか。めんどくさ・・・・)


 こっそり溜息つきつつ、ベルトポーチに突っ込んでいけばカウンターの男が今度はぎょっとした。


(容量と体積が比例してないからな。普通はビビるか・・・・・・って、ルークは平然としてるな・・・・)


 もしかしたらルークの世界には俺の能力と似たような効果の術でもあるのか?

 とか思いつつ、最後の一袋をルークへ。


「ほいよ」

「へっ?」

「小遣い」


 一袋ざっと20,000Gくらいなら、小遣いとして妥当だろう。


「え、ちょ、!俺自分の分は自分で換金するよっ!」

「いーからいーから、おっさんの親心ってやつよ。遠慮せず受け取りなって」


 返品は不可。

 あとルークは換金禁止ってことでさっさか換金所から離れれば、慌てたようにルークが隣に並んだ。


「あの、・・・・」

「なんだ?」

「親心って・・・・」

「お前がこの世界に慣れるまで手伝ってやる、って言っただろ?そりゃつまり、俺はルークの保護者ってことだ」


 保護者イコール親代わり。

 ならば親心で間違いはあるまい?


「この世界に慣れたあと一人立ち独り立ちするもよし、一緒にいるもよし。どっちにせよ、それまでルークは俺の保護下。ならば金銭面での面倒をみるのは当たり前だろ?」

「当たり前・・・・なのか?」

「俺の知る限りでは、な」

「・・・・・・・」

「ま、どーしてもってーなら、出世払いってことでいいしな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、分かった。じゃあ、いつか絶対返すから、それまでよろしくお願いします!」


 もう少し渋るかなー、と言葉を用意してたけど、思いのほかあっさり納得してくれた。

 しかも礼儀正しく腰を90度折って頭下げるとか、結構ルークって体育会系?



「はい、よろしくされますよっと。さて、そんじゃまずは服でも揃えようぜ。どうも俺ら浮いちまってるみたいだしな」



 そう言いながらまた俺はルークの頭を撫でたわけなんだが・・・・・・・こりゃ本当に癖になったな。














※1G=¥100で書いてます
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