今まで何も知らずフリーザの元で働かされていた自分に対する怒りがようやく治まったらしいベジータは、その怒りをぶつけるようにスカウターを握りつぶした。


「あ、お前スカウターなくなって大丈夫なのかよ」

「ふんっ、こんな物もはや必要ない」

「んー?ってことは、おまえ気配探れるようになったのか?」

「何?・・・・・・・その言い方、もはや貴様もこの特技を・・・・?」

「スカウターみたいに相手の力を探ったり、場所を感知したりだろ?んなのちっこい頃とっくに習得してたぜ!」


 むしろそれに重点を置いて鍛えてたんだけど。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちっ」


 また舌打ち。

 まぁ、それがベジータだけどな・・・・。


「・・・・っ!?」


 なんかもう全然昔と変わってないベジータに、今更ながら懐かしく感じていたら、ふと、かすかな殺気に肌が粟立った。

 それはベジータも同じだったらしく、反射的に今いる場所から飛びのいた俺と全く同じタイミングで回避行動。


 そして足が地面に着くよりも早く、今までベジータが経っていた場所に着弾する気弾・・・・・・・・・・・・って、


「ブロリー!?」

!大丈夫!?」


 着弾すると同時に俺の前へ滑り込むように現れたのは、見慣れた姿。

 けれどいつになく雰囲気が荒々しく、まるで親の仇でも見るかのようにベジータを睨みつけるブロリーはまるで・・・・・・





(精一杯威嚇してる子犬・・・・・・・・・・っ!)


 やばい!

 キュンと来た!






30歳前後はガラスのハート








 いきり立つベジータを適当にいさめ、威嚇しまくってるブロリーは抱っこして簡単に説明。


「大丈夫だぞブロリー。このM字ハゲは一応敵じゃないからなー」

「・・・・・貴様、喧嘩売ってやがるのか・・・・・!?」

「・・・・・・・・・でもこいつ、さっきたおしたやつと同じ服着てる」

「あー、ベジータが言ってたドドリア、だっけ?一応同じフリーザの所の戦闘服だからな」


 なるほど、俺が襲われてたらと庇ってくれたわけだ。

 ・・・・・・・・・愛い奴め。


 確かに今の俺は戦闘となったら殆ど役に立たない奴だけど、それでもまだ手はある。


 備えあれば憂いなし。


 健康優良児の代表と言ってもいいほど健康体を誇るサイヤ人にも効く薬を用意していたのと同じく、何らかの原因で力が半分も出ないときに強敵と遭遇したら、で用意していた武器の数々。

 一応ブロリーもその事を知っているし、使い方も教えていた。


 でも今の様子から、そのことはすっぽりと頭から抜け落ちてるみたい。


 ・・・・・・・・もしくは、そんな武器を持っていると覚えていても心配で体が先に動いたとか?


 うーん、どっちが本当かわからないけど、こうして誰かに心配されるってのは随分久しぶりの感触だから、少し照れるな。

 それに、今まで背に庇ってた弟がそういった行動をとれるようになったってことも、なんだか嬉しい。


(これが子供の成長ってやつか・・・・・・・・ふむふむ、お兄ちゃん感無量!)


「おい、このガキが貴様の言っていた弟か?」

「気を探ってたなら分かるだろ。どうだ、オレ自慢の弟だ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・っち」


 今度は何の舌打ちだ。

 押し黙ったかと思いきや、どことなく悔しそうに睨みつけてきたベジータ。


 なんだー?


「・・・・・・・ねぇ、このおじさん知り合い?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・`;:゛;`;・(ΞεΞ )ぶっ

「おじっ・・・・・・・!?」


ぶはははっははっははははははっ!!!!!!!!!

 おじさん!

 確かにおじさんだ!


 三十路は微妙なお年頃とよく聞くけど、ベジータめ!しっかりダメージ受けてや・が・る!!

だははははははっはははははっっははははっははは!!!!!!!!!!!


 ナイスだブロリー!


 ・・・・・・・おっとと、笑いすぎたらベジータがマジ切れしちまう。



「大丈夫、ベジータはまだ・・若いぜっ☆」

「五月蠅い!だいたい貴様それはフォローか!?フォローなのか!?嘘臭いわぁッ!!!」

「わーかーいーって、ほら、そのツッコミとかオッサンには無理な切れ味じゃね?」

「・・・・・・・・・とおじさん、なかいいね」

「おうともよー、伊達に幼馴染やってねーからなー」

「おさななじみ?」

「・・・・・・・・・・・・・あー」



 そういや、ブロリーにどうやって説明しよう。

 タイムスリップとか、その辺話しても理解できるような教育してねーしなー。

 生きる事前提な生活はもうほんと、そろそろ卒業しないと。


 うーん。

 もういっそ主人公組と一緒に地球行って住み着くか?


 ・・・・・・・・・・・・あ、いやいやいや、そうなったら騒動に首突っ込みかねんからな。

 むー、どうしよう。



「――――聞いているのか貴様!!?

「あん?」



 少し考え事していたらベジータを無視する形になっていたらしい。

 とりあえず軽く謝り、なだめ、何を言っていたのか聞きなおすのにかかった時間約5分。


 よし、昔より短くなってる。

 大人になったな、ベジータ!


「っち、仕方ない、もう一度言ってやるからよーく聞け」

「うい」

「〜〜〜っ、・・・・、今から俺はやる事がある。本当なら貴様にも手伝わさせてやろうかと思っていたが、足手まといは邪魔だ」

「おう」

「だが貴様とその弟の戦力はおそらく必要になる。事が済み次第迎えに来てやるから、その時はフリーザどもを片づけるのに手を貸しやがれ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・りょーかい」


 驚いた。

 何様俺様ベジータ様のこいつが、ほんのわずかとはいえこの俺に頼みごとなんて。

 普段なら命令口調で上から目線なのに。


 なるほど、フリーザを相手にするには万全を取りたいってことか。


「ブロリーもいいよな?」

「うん、よくわからないけどがいいなら俺もいいよ」


 俺とブロリーの返事を聞いたベジータは、満足そうに一つ頷き、もう用はないといわんばかりに空の彼方へ飛んで行った。




 ・・・・・・・・・・うん、あれだな。

 ここにいつまでもいたら俺にからかわれ続けるから、さっさと用件伝えておさらばしたかったわけだね。


 うんうん。


 何年たっても行動原理変わってないようで、微笑ましい限りだよ。



 なんて生温かい笑みをベジータが飛んでいった方角へ向けていれば、ぺちぺちと腕を軽く叩かれる感触。

 これが腕から下ろしての合図だと知ってる私は、素直に抱っこしていたブロリーを地面に。


 そうすればじっと下から見上げられ、目線を同じくするため屈みこめば


、もうからだ大丈夫?」

「おう。見ての通りだ。動くだけならもうほとんど問題ねぇよ」


 心配そうな顔をしているから、安心させるよう笑顔を前面に出してそう答えれば、「よかったぁ」と気の抜けたような笑みが返ってきた。


「ところでお前、俺のいないところで戦ったんだって?あれ・・は大丈夫だったか?」

「うん!そんなに強くなかったからならなかったし、シュンサツだった!」

「そうかそうか!(つーかこいつ、どこで瞬殺とかって言葉覚えたんだ・・・・・・・・・?)


 ぱっと見ただけでも怪我は負ってないようだし、本当に瞬殺だったみたいだ。

 一応俺たちは超化出来るし、犯罪者を刈る賞金稼ぎとして今までやってきてたからそれなりに実力は付いていると思ってはいた。


 けれど、ぶっちゃけそれがフリーザに通用するとかはさっぱり分かんなかったし、下手に接触して存在がばれたら面倒だからと避けまくっていたのが今回裏目に出たか。



(もしかしたら、フリーザって結構雑魚かもしんねぇな・・・・・・。でも今の俺じゃ相手にならない)



 まずは体調を整える事が先決。


 そしてそれと同時にすることは、足の確保。



「ところで、頼んだものは調べられたか?」

「うん!この星はとくに害ないみたい!住んでるのはナメック星人?ってのだけだけど、今よその星から人間か2人以上きてるみたい」

「人間、ねぇ・・・・・・・(おそらく原作の主人公たちだな)

「宇宙船はそいつらが乗ってきたのと、オレが倒したのが乗ってきたのしかないって」

「数に限りがあるってか、あー、まぁ、どうにかなる、かな?」



 狙うなら、色々厄介なフリーザ一味より人間・・・・地球人側だな。

 ベジータが乗ってきたのもあるだろうけど、あいつのことだ、間違いなく個人用の小型宇宙船だろう。

 ならば最初は警戒されるだろうけど、話さえできれば十分通じる相手を選ぶのは定石。



 ・・・・・・・・・・・・ベジータは冷静な時ならそれなりに頭切れるんだけど、ちょーっと血が昇ればすーぐ調子のるからな。

 万が一の逃走方法なんて多分考えてねーだろうし、もしかしたら俺とブロリーを見捨てる可能性もある。

 だからここは俺が用意しておかなければ、な。



 原作通りなら何らかの理由で生き残れるのだろうけど、正直ここは現実だ。

 保険は、いくつもいくつも用意しておくに限る。



「・・・・・ブロリー、お前が会った人間は、お前より強そうだったか?」

「ううん」

「よし、ならそいつらにこれから会いに行く。そいつらの気配、まだ覚えてるか?」

「うん!」

「いーい返事だ。じゃ、案内は任せた」



 そうブロリーに言えば、ぱぁっと表情を輝かせてやる気満々に。


 うん、頼もしい限りだ。



「荷物持ってくるね!」

「ああ」



 さぁて、交渉がうまい事進めばいいのだけど。


 そう内心でこぼしつつ何となく見上げた空は、どこまでも・・・・・・・・緑だった。
















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