体を少しでも休める為目の上に水で湿らせたタオルを置き、横になっていたところに奴は現れた。


「地球人か・・・・・・・・?おい、起きろ」


 なんかデジャブ。

 まだ体はダルいけど、仕方なしにタオルをどかして胡乱気に見上げた先には・・・・



「・・・・・・・・・・・・・ベジータ?」



 立派なM字ハゲに、見知った戦闘服。

 そしてそんな高くない身長。


 こいつは、間違いない。



「・・・・・・・・その眼・・・・・まさか、貴様・・・・・かっ!?」

「おっ、やっぱベジータか!」

「貴様っ、何故ここに・・・・いや、生きていたのか・・・・・・・・・・っち


 おいおい、懐かしの友に会ったってゆーのに舌打ちはないだろ、舌打ちは。

 ってゆーか、


「お前老けたな」

「っ!・・・相変わらず礼儀がなってないな貴様はっ!」








三十路(笑)との再会










「25年!?」

「何を驚いている。ついに頭がイカレたか?」


 なんか思いのほかベジータが年食ってる事に疑問を持ち聞いてみれば、驚愕の事実!


「・・・・・・・・俺は今11歳だ」

「は?」

「つか見て気付けよ三十路。麗しき10代の少女だぞ。一目でおかしいとか気付かねぇのか三十路」

「三十路三十路と貴様・・・・っ!!」


 うん、この気の短いキレっぷりは間違いなく本人だ。

 実はちょっとオレオレ詐欺的な偽物かと思ったんだけど、このキレっぷりは偽りようがないな。


 ってゆーか三十路(笑)

 そーだよこいつ三十路(笑)


 老けたな(笑)



「まーまーそういきり立つなよ。おまえ三十路(笑)にもなってまだキレやすいのか?」

「貴様っ・・・・!!」

「貴様貴様煩い。ちょっと現状を整理するから黙ってな王子サマ」



 とか言ったら余計逆上すると分かっていた。

 案の定ぷっつんきたらしいベジータが横でぎゃんぎゃん吠えてるけど、狙いと通りだから問題なし。


 なにせ、こいつの声は俺の記憶を上手いこと刺激してくれる・・・・・・・から。


(この星に来た時から感じてたデジャブ・・・・・・・・そして三十路(笑)のベジータ・・・・・俺が危惧していた原作に沿った流れをこの世界が進んでいるのだとしたら・・・・・・・・・)


 ・・・・・・・・・・・・・・・えーと、確かベジータは主人公の悟空より何個か年上で、その悟空が20歳くらいで悟飯が生まれて、その数年後にナントカって星でフリーザと戦闘。

 んでそれ以降はベジータは地球に住みついたはずだから、年齢的にも見てこの星は・・・・・・・・えと、ナントカって星の可能性が高い・・・・・・・・かもしれない。


 あー・・・・なんて名前の星だったっけー?

 な、がついたような・・・・・・・・なー、なななな、ナ…メコ?う゛ー、なんか近い気がする。

 あ、そーだそーだ、たしかピッコロの故郷だ。

 ・・・・・・・・・・・っは、ナメクジ星!


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃないな、間違いなく。


 なんだったかなー・・・。


「―――っそもそも、何故貴様がナメック星にいる!?」

「あ、それそれ、ナメック星だ!あー、良かったすっきりしたぜ!」

「・・・・・・・・・まさか、何も知らずこの星に来たのか貴様っ・・・・・!?」

「まぁな。この星に来たのは偶然だ、偶然。」

「偶然でこの星、このタイミングとは、ふんっ、随分と強運なことだな!」


 強運かどうかはともかく、悪運は強いよね。


「それで、貴様が幼いままな理由はなんだ」

「こっちはおそらくだけど、ブラックホールにのみ込まれそうなところをかなり強引に突っ切ったことが原因かな?」

「ふんっ、そのままのみ込まれていればよかったものを!」

「へーへー。残念ながら生きてますよーっと」


 相変わらずのに生まれ口に、ついつい苦笑。


 そしてもう大分体の調子も戻ってきたからと起き上がれば、想像していたよりももっと近い位置にベジータの頭。


(思っていたより背低っ)


 歪みそうになる口元を根性で繕い、背伸びをするふりをして視線は明後日の方向に。


(コンプレックスなんだろうなぁ・・・・・・)


 なんて思っていれば、ベジータが息をのむ音が聞こえた。


(俺との身長差に気付いてショックを受けたのか・・・!?)


 ばっ、と勢いよく振り返ると、奴は俺じゃなく別の方向・・・・・・・・・確かブロリーが向かった方角を睨みつけていて・・・・・


「・・・・・・・・!」


 気を探らずとも分かる、力が爆発する気配。

 それはイコール、ブロリーが、もしくはそのほかの誰かが現在戦闘しているというわけで、


「おい、貴様誰かツレでもいるのか?」

「ああ、俺の弟が一人」

「弟?」

「まぁ、弟と言っても義理だが、オレ達と同じサイヤ人の生き残りだ」

「ふんっ、生き残りがこうもいたとはな」

「それで、ブロリーがどうかしたのか?スカウターで感知したんだろう」

「・・・・・・ドドリアが、お前の弟とやらにやられた様だ。貴様の弟なだけあって、それなりにはやるようだな」

「あいつ・・・・・・・」


 ドドリアが誰だか知らないが、ベジータの様子からフリーザの部下だと想定し、何故そいつとブロリーが戦うような事になったのか。

 考えうる可能性で最も高いのが、たまたま遭遇してたまたま喧嘩を売られて返り討ちってところだけど・・・・・・・・・


(ブロリーと力が拮抗した相手じゃなくてよかった・・・・・・・)


 ベジータがほんのり悔しそうにしてるってことは、結構そのドドリアってのは強敵ってことだよな。

 一応もしもを考えて鍛えていたけれど、もしブロリーと同等かそれ以上の相手だったら・・・・・・・・


(今頃この星は宇宙のチリと化してても可笑しくねぇからな・・・・・・・)


 小さくため息をつきつつ、詳しく現状を把握しようと千里眼を使おうと目を閉じたけれど、


ちりっ


「っ・・・・(駄目だ、体は動くけど、その他の動作はまだ負担が大きい)


 千里眼は気を使うわけではないけど、精神を集中させることで可能となる技。

 ってことはつまり、今の俺が負ってるダメージはそっち方面・・・・・・・・脳内ダメージって所か。


 ・・・・・・・・・・まいった。

 外的要因ならまだしも内的要因は時間経過が癒してくれるかハッキリと分かんねぇ・・・!


 どこか医療設備が整ったところで精密検査ができれば最良なんだが・・・・・・・ったく、まいった。



「ふんっ、貴様の弟の力と貴様の力があれば、フリーザの野郎を倒すことも容易いか・・・・・・」

「あ?」

「手を貸しやがれ。ドドリアをああも短時間で倒す貴様の弟と、それと共にいた貴様、そして今の俺が組めば、フリーザの連中にも勝てる・・・・!」

「あー、無理」



 どこか悦に入ったようにそういうベジータには悪いが、今の俺は無理。



「さっきブラックホール抜けたって言ったろ?その影響なのか今俺立ってるのもやっとなの。残念」

「なにぃっ!?」

「ついでに俺の弟、15分以上は戦えない体だから」

「・・・・・使えない奴らめ・・・・っ!!」


 いやほんと、失礼なやつだなー。


「てかなに、お前フリーザを倒すって仇打ちでもする気か?つか今さら?」


 そーいやベジータって原作でフリーザの部下じゃなかったっけ?

 ベジータ星ぶっ壊されて、同胞(ほぼ)皆殺しされて、プライドの高いベジータがよく大人しく部下になったよな。

 なんでだっけ?


 あー・・・・、その辺ぜんっぜん思い出せねぇや。


 思い出せないままってのは凄まじく気持ち悪い。

 なので、ちょうど本人が目の前にいる事だし、直接聞いてみればいいやとそう尋ねたのだけど・・・・・


「仇打ち?なんのだ?」

「は?だから、フリーザに殺されたサイヤ人たちの」

「何っ・・・・?」


 ・・・・・・・・・・・・・あっれー?


「・・・・・知らねぇの?ベジータ星、フリーザに滅ぼされたんだぜ」


 そう言った瞬間、固まったベジータ。

 んー、本気で知らなかったみたいだ。


 そーいや俺がベジータ星から脱出する時、こいつ余所の星に行ってたっけ。

 ってことは、適当な嘘聞かせられて今までいいように働かせられたって感じか?


 ・・・・・・・・はは。


「どんまーい」

「煩いっ!」


 笑顔で肩を叩いてやれば、怒声と共にたたき落とされた。


















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