私は無神論者だ。
幽霊の類はもちろん、神様仏様の類はまったく信じていない。
人は死んだら魂が召され輪廻転生して新たな一生を、なんて、漫画や映画の中の二次元設定としてしか認識していなかった。
死ねばただの終わりだと。
火葬されるなら灰になり、土葬されたら土に還る。
現実はそんな夢にあふれた世界じゃないと理解していた。
だから、私は夢にあふれた二次元に強く惹かれたのかもしれない。
普通にありえない事象にあふれた空想の世界。
夢や希望にあふれた紙面の世界。
……なんて、かっこよく言ってみたけど要は腐女子だったわけだ、私は。
現実はたしかに厳しかったけど、プライベートでは二次元に旅立ち癒されたり悶えたり萌えたりの毎日。
実の兄貴が美形だったためコスプレさせたり、とあるゲームのキャラとそっくりだったため写真撮りまくって荒稼ぎしたり・・・・・・・・あはっ☆
にしても兄貴のあのそっくり具合は恐ろしいほどだったわ・・・・・・・二次元のキャラと瓜二つってどうなのよ・・・・・・・
ゴホン。
ちょっと話がずれたけど、まぁ、私は非現実的なことは二次元の世界でしかありえないと認識する、現実主義者だったわけだ。
現在進行形でなく、過去形。
そう、問題は私の現実主義な考えが過去形だったことが問題なのよ。
まさか夢小説みたいに転生トリップして男化とか、マジに起こりえる事象だったなんて誰が予想できる!?
事故死して、あーもう私まだ若いのに人生終わりかよ、って暗転したと思ったら赤ん坊でさ。
産湯に付けられたとき「元気な男の子ですよ!」なんて声が聞こえた時、どんだけ私が絶望したか!!
うん、まぁ、結構美少年みたいだからちょっと希望がわいたけど・・・・・・・・(腐)
でも、一番の問題が発覚したのは私のいる国の名前が『ジャポン』と判明したときのこと。
え、なんか中途半端に微妙なその名前ってモシカシテェ、と冷や汗かきつつ幼児用の世界地図をそれとなくねだったら、見知った地名があちらこちら。
結果、私の予感は嫌な方に見事大当たり。
なんだよHUNTER×HUNTER世界ってマジにあったのかよこんちくしょー(涙)
世界は私を置いてけぼりに回ってる
輪廻転生とかありえないと思っていたうえ、二次元の世界が現実の世界として存在してしまっているこの星に生まれて早19年。
え、早い?
あー、まぁ色々あったと言えばあったけど、まぁそれについてはいずれ時間があるときに。
とりあえず、ついにやってきてしまった今年が大問題。
もうかなり昔の記憶でぼやけまくってしまったけど、なんとか記憶している知識通りこの世界が進むなら、今年は原作スタートの年。
主人公がハンター試験を受け、怒涛の成長劇の始まる年。
もし私が前世で見ていた夢主人公とかだったのなら、特に深く考えもせず試験受けに行って主人公組、もしくは某奇術師やブラコン暗殺者とお近づきに、そしていずれは某旅団とぐふふ・・・・なんてなっていたのだろうけど、生憎私は一応まだ現実主義者だ。
転生とか漫画世界にトリップとかして一時期自棄になってたこともあったけど、19年も経てば落ち着きもする。
この世界に生まれ、この世界が現実だと理解し、この世界で育った私ははっきりと今断言できる。
ハンター?んなもん化物以外の何もんでもねーよ。
拳でコンクリート粉砕したりバズーカ片手で受け止めたりなんて無理無理無理無理。
一応私が生まれた家はジャポンでも有数の武家(この世界まだ侍とかいるからビックリ!)だったから多少の武道は学んだ。
あと幼少期から暇な時に頑張って起こした念もちょこちょこ鍛えてるから、多少の補強もされてる。
それでも無理。
絶対無理。
喧嘩で無敗でも、うちの道場で無敗でも、ジャポンで五指に入る剣士と認定されていようとも、世界は広い。
井の中の蛙という言葉が指すように、この世界は本当に広い。
私は、周りがどれだけ囃し立てようが慢心する気はない。
っていうか、すんません。
三つ目のジャポンで五指ってやつ、念使いました。
真剣での果し合いをしたときに相手がえっらい殺気?を向けてくるもんだから、ついつい念で威嚇を、ね?
そしたら相手さんビビっちゃいまして、なんか剣筋が乱れて動きも鈍くなってあっさり勝利。
で、そんなのが何度か続いて気がつけば五指に入るとか………。
うぅ・・・・・・・
それもこれも私の緩い精孔が問題なんだぁっ!!
ちょっとびびっただけで普段は一般人並に抑えてる念が溢れ出すって、どんだけ緩いんだよ私の精孔………!!
まぁ、幸いなことに念使いだって周りにばれてないのが唯一の救い?
つか、本当に念って貴重な能力なんだね。
一応ここまで生きて来たけど、念能力者って私まだ一人も遭遇してないんだよ。
剣の達人って人も3人くらいが無意識にほんの少し使ってたくらいだったし、完全に使える人はゼロ。
知り合いに忍者もいるけど、単にそいつが教えられていないだけなのか使える様子もないし。
とりあえず念が使えるってだけで今のところ私がどうにか勝ってるわけなんだよ。
イコール、周りが念能力者だらけになったら最弱決定。
最弱だったら死亡率がぐーんと上がる。
それは嫌。
せっかく美青年に生まれ変わったのにジェントルな自分見るまで死んでたまるかっ!!
ってわけで、私はいくら美味しい状況に転生したからと言って原作にかかわろうなんて思わない。
だって私一般人だし。
下手すれば試験の最中に死亡。
どうにかクリアして合格しても死亡フラグは立ちっぱなしだ。
だから、絶対にかかわる気はない。
かかわる気なんぞ、微塵もない………!!
「かかわる気ないってのに…おっ前はなーに勝手に応募してや・が・る〜〜〜!!!」
「いだだだだだだだだっ!!ちょ、さんギブギブっ!!関節きまってるって!!」
「私は以前に断ったよな!?はっきりきっぱりすっぱりとこ・と・わ・った・よ・な!?」
「ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
新年明けて邸も騒々しい中訪れた幼馴染に渡されたものは、関わりたくないと全力で拒否った覚えのあるハンター試験の案内。
数週間前「一緒に参加しないか?」と誘われたがしっかり断った。
しつこく食いついてくるのをフルボッコにしてまで断った。
な・の・に、手渡された案内は間違いなく私宛てのもの。
つまり、この幼馴染は勝手に応募しやがった、と。
まぁ案内来ても行かなければ問題ないんだけど、そう言ったらこの馬鹿なんて言ったと思う?
「拒否りやがったらお前の彼女たちに85股してるってバラしてやる!」
「お前何様だハゲ!」
「ハゲじゃねえって!これは剃ってるだけ!」
「見苦しい言い訳するな!ハゲ忍者!」
「ハゲじゃねぇーー!!」
「うるせぇっ!!」
で、さっきの関節技に繋がる、と。
「だいたいなぁ、あいつら(彼女たち)は他に彼女いるって知ってて付き合ってるやつらなんだからバレた所で痛くはない!」
「それでも限度っつーもんがあるだろうが!せいぜいが二股三股が平均だっての!なんだよ80人越えって!」
「つかなんでお前が人数把握してんだよ!」
「忍者なめんな!」
「いらんことに能力使うなハゲ!!」
「ハゲじゃねぇっ!!」
oh!
会話がリピートしてきたよ。
あ、ちなみに幼馴染ってのは原作にも登場したハゲ忍者ハンゾーのこと。
幼稚園の頃から小学校卒業までずーっと同じ学校で、卒業してからもなんだかんだでよくつるむ悪友がこいつ。
というか、何故か知らないけどハンゾーは私をライバル認定しているらしく、事あるごとに色々と張り合ってくる。
だから多分今回のハンター試験もその勝負?に丁度いいから勝手に応募したんだと思う。
うん。
とりあえず確認してみよう。
「そもそも何故そこまで私を受けさせたがる」
「一人で行くと寂しーだろうが」
「一度死んでみるか?」
予想が外れてがっくし。
そのついでに湧きあがる苛立ちを笑顔と拳に込めて、ハンゾーへ見舞った。
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