頬を撫でる柔らかな風。
さわさわと揺れる草葉の音。
目を開けると緑色の空が、視界いっぱいに広がっていた。
「・・・・・・・・・・・・・瞬間移動、成功・・・・・・・・・・か?」
「・・・・・・・ここ、どこの星?」
「・・・さぁ、どこだろうなぁ・・・・・」
健康って、いいことだよね
胸に強く抱きしめていたブロリーを地面に下ろし、こきり、と首をひねる。
「なぁんか、懐かしいニオイがする、なぁ・・・・」
ぐるりと視線を巡らせ、気配を探ろうと意識を集中しようと目を閉じ・・・・・・・、
「・・・・・・ぉお?」
「・・・・・・・・?」
平衡感覚が狂ったかのようで、ぐにゃりと視界が歪み、気づいたら俺は地面に座り込んでいた。
「っ!!」
「おぉぉおおぉおぉぉ・・・・・」
ぐわんぐわんと頭が揺れる。
なんだこれなんだこれなんだこれっ。
すんげー貧血ったプラス二日酔いと筋肉痛が重なった上インフルエンザにかかったような・・・・・・・・・・・要はめっちゃ気持ちわりーの。
「・・・・・・・・・あー、ブラックホール突っ切った影響か、これ?」
「大丈夫っ!?」
「おー、なんかグラグラすっけどどうにか大丈夫・・・・・・・・・・・・お前はどこもおかしくないか?」
「うん、オレはへーき、でもが・・・!」
「いーのいーの、ある程度時間が経てば戻るって。たぶん・・・・・」
目を瞑って深く深呼吸を繰り返せば、いくらかはマシになった。
けど、相も変わらず気配を探ろうとすれば脳がぐらぐら揺れるみたいになるから、おそらくしばらくは戦闘とか無理っぽい。
つまりそういった事態にならなければ、おそらくこの感覚から数時間後にはもと通り、ってこと。
「ブロリー、見たとおり俺はしばらく何もできなさそうだ」
「うん・・・・・・・・・・・・・・」
「そーんな不安そうな顔すんなって。時間をおけば治るから(たぶん・・・・)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから頼みたい。この星に知的生命体がいるかどうか、星の環境は俺たちの体に影響をおよばさないか、星を移動できるくらいの文明が発達しているかどうか、・・・・・・できるか?」
「できるっ!!」
「よーし、んじゃ行ってこい。俺はしばらくここで体を休めてるからよ」
「一人で大丈夫・・・・・・・?」
「ばーか、それはこっちのセリフだって。今こんなんだけど、俺の強さ、お前が知らないはずはないだろう?」
「・・・・・・・・うん!じゃあ、オレ行ってくるね!」
「ああ、よろしく頼む」
がちゃがちゃと色々詰め込んだ鞄から必要な道具も取り出し、駆け出していくブロリー。
俺はその姿が見えなくなるまで笑顔で手を振り、完全に視界から消えたらばたり、と体が後ろに倒れた。
「・・・・・・・・・・・・くぁあ〜〜〜〜〜っ、マジなんだよこれって!!ぎ、ぼ、ぢ、わ、る、ぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
片手は腹、もう片方は口元を押さえつつ地面をゴロゴロ。
んで急な動きでせり上がってきたモノを我慢できず盛大にぶちまけ、再び地面とお友達に。
ずきずきと痛む額に手をやり、もみほぐしつつ状況を整理することに。
(この星は、今まで降り立った星々どれともヒットしないな・・・・・・)
緑色の空、大地には短い草(青色)が生茂り、遠くに見える海は空と同じ緑色。
空には太陽が三つ。
嗅ぎとれる範囲だと、この星は環境汚染だなんだは特に感じ取れず、自然のままって感じだ。
(星を移動できるだけの文明は・・・・・・期待できないかな)
小さく息を吐きながら、ぼーっと空を見上げた。
(でも、こんなゆったりした星なら、ま、定住するってのも有りかも)
なんだかんだで宇宙をうろちょろ、時には傭兵紛い、時には金持ちの護衛とかやりながら暮らしてきたここ数年。
単にそれはフリーザ一味から逃れるためで、超化もできるんだからそろそろ対峙するのも可能だろうと考えていた。
俺だけなら全然余裕。
ブロリーは、さすが生まれたときから高レベルな戦闘力を持っていただけあって、今の俺には劣るけど十分な実力。
(長時間の超化はいろいろと不安が残るから、それをどうにかなるまでは定住するのは危険だって考えてたけど・・・・・・・・・・・・これくらい人がいない所だったら大丈夫な気がする)
本音を言えば、ちゃんとブロリーには人の中で暮らして同年代の子供とわーわーきゃーきゃー甘酸っぱい青春でも味わってほしいとか思ってる。
でもそれが結構難しいことだってのも理解してるから、俺はブロリーと二人宇宙をうろちょろしてるんだ。
「ぅー・・・・・・・・・モツ出そ・・・・」
精神が男な俺としては誇らしい筋肉がっちりな腹部をさすり、調子を整える。
ぐわんぐわんと揺れる脳はほんのり緩まり、耳鳴りも少しだけど治まってきた。
そうしたら先ほど出したやつとか、口の中に残ったものとかが気になり始めて、ちょっとマジで凹む。
時間で言うとだいたい10分くらい。
不快なものを我慢して体の調子を整え、起き上がることが出来るようになった。
でもやっぱり急な動きはきついので、のそのそと動いて荷物のところへ。
鞄から水筒を取り出し不快な口内をすすげば、多少は緩和される気持ち悪さ。
「・・・・・・・・・・・・はぁ」
小さく息を吐き、立てたひざに額を押し付け強く目を瞑る。
(この星が安全とはハッキリ分からないんだ。いつまでもこんなグダグダは足手まといでしかないよな・・・・・・・・・)
数度の深呼吸。
いまだ暴れる鼓動を意識して落ち着け、再び鞄を探って取り出すのは、もしものときで用意していた薬箱。
・・・・・・・・・・ほら、サイヤ人ってやたら頑丈だからさ。
怪我は負っても病気なんて生まれてこれまで一度もかかったことないんだよ。
俺も、ブロリーも。
だけど元一般人の俺としては、もしものときを考えてちゃんと用意してました!
体質にあわせてしっかり利く薬を!
偉い俺!
よくやった俺!
なんてどうにかこうにか気分を上げて意識の回復を試みたり。
ほら、やっぱりテンションって大事じゃん?
「頭痛止、解熱剤、疲労回復、鎮痛剤、二日酔いの薬・・・・・・・・・・・全部飲むってのは流石にだめだよな・・・・・・・・・・」
頭は変わらずひざに乗っけて、又の間に薬箱をおきがさごそと中を探れば多種多様な薬がそこに。
とりあえず飲みあわせで変な症状出たり、悪化するのは嫌だから優先すべき症状の薬を飲むことに。
「利いてくれよ、頼むから・・・・・・・・・・」
人生初のお薬は、ちょいと苦かったです。
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