転生した先がデジモンの存在する世界だと知って数日後、いつものようにお隣のタイ兄(何かこう呼べと言われた)とヒカリ(ちゃん付け拒否られて地味にショック)と遊んでいた俺はようやく気付いた。



 ――――――この二人、デジモンアドベンチャーの主人公じゃん。



 いつも元気でガキ大将的な、凄い髪形の兄・太一。

 ホイッスルを常に首からぶら下げてる、ちょい不思議ちゃんな妹・ヒカリ。


 遥か遠い過去の記憶に埋もれた、アニメに登場した八神兄妹。

 つか、俺よく覚えてたよな。

 もうあれ何年前だろう・・・・・。

 軽く10年以上は前だよな・・・・・。


 つか、この世界って何、パラレルワールド的なもんじゃ無いワケ?

 デジアドの世界ってオチ?


 ・・・・・いや、ここが現実ってのはほぼ間違いはない。

 つか、冗談じゃない。

 ここはデジアドの世界で、原作の通りに全てが進みますとか、無いわー。


 俺がいるからここは可能性の世界の一つで、アニメのあれは単なる偶然の産物とか、色々推測を立てるけど気分がいいもんじゃないのは確か。


 なんなんだろ。

 そもそも、俺が前世の記憶を保持したままこの世界に生まれてきたのも、一体どういった理由からか。



 今まで考えないようにしてきた全てが、一気にあふれてくる。



、どうしたんだ?」

ー?」


 突然ぴたりと動きを止め、顔を青くして黙り込んだ俺を心配したように顔を覗き込んでくる二人に、一瞬だけど浮かんだのは、恐怖。


 この二人は世界のカギを握る二人。

 俺とは違う、主人公としての役割を世界から与えられた、選ばれた存在。


 ・・・・・・・・・・・・・・・俺って何?

 異物である俺が、この世界に必要な二人の傍にいて大丈夫なのか?



 ・・・・・・・・・・・・なんて。


「・・・ぅうん、なんでもないよ」


 あほなこと考えた自分に深い溜息一つ。


「しんぱいしてくれて、ありがとね、ふたりとも」


 にっこり笑ってそう返せば、安心したような笑顔が返ってきた。




 ・・・・・・まるで思考を恐怖で塗りつぶされるようなあの感覚。

 内側から溢れる思考、ではなく、外側から侵食されるような感覚は、何となくだけど俺のものじゃない・・・・・・・・


(もしかして、俺の持ってるデジヴァイス・・・・・っていうか、紋章の力のせいなのかね、今の)


 普段ならあり得ない、俺がおちいった思考の渦。

 ぶっちゃけ俺ってネガティブとは程遠い思考なのね。

 だから二人に声をかけられたおかげで、思い出せた。


 俺がこの世界に記憶を持ったまま生まれてきたことを今まで考えなかったのは、単に面倒だったから。


 それがなんであんな恐怖思考に流れ着いたのか、普段の俺からは想像もつかない。

 でも、良いものじゃないというのはハッキリと分かる訳で、今度からちょっと気をつける事にしよう。


 うん。


(しっかし、俺もデジヴァイス持ってるってことは、巻き込まれるってことなのかね・・・・・はぁ、面倒・・・・)


 来るかもしれない可能性の高い未来は、まぁ指針として(ほとんど覚えてないけど)活用する事にする。



 さてさて、それじゃあ八神兄妹との遊びに集中するとするかね。

 どうせ未来はまだまだ先何だし、ね。










紋章? 『闇』ですがなにか?











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