私は自分の身が一番大事だ。


 だから最初はハンター試験なんて関わるつもりなんてなかったし、(本当にいるのか半信半疑な)原作キャラに関わる気もなかった。

 だけどハンゾーは幼馴染で、原作に登場するあいつと同一人物だなんて実はつい最近まで全く気づかなかったし、その馬鹿ハゲによって試験に参加するなんて思ってもみなかった。


 今はもうここまで来たんだから、ぎりぎり覚えてる試験内容だったらどうにかなるだろうと判断し、参加する決意を固めた。

 後は下手に主人公組やレギュラーキャラと関わらないようこそこそと頑張ろうと心にきめ、私は影、私は道端の石ころ、ただの美形なあんちゃんだと自己暗示。


 そう、私はコマのスペースを埋めるモブキャラとなるのだー!と、心の中で雄叫びをあげ絶までしてたってのに、



「やぁ、ひさしぶり♥」



 何故に危険人物ヒソカに気安く話しかけられる状況になってるんですかーーー!?!?






ただの美形だと思っていたのが間違い








 隣に立つハンゾーが胡乱気な視線を向けてくるのを感じる。

 そして周囲にいる受験者たちが奇異なものを見るかのように距離をとっているのが見える。


 すんません、私もそっちに混ざっていいですか?


 なんて意味を込めて周囲を見回したら、やっぱり関わりたくないのか更に遠のく観衆。



「ひどいなぁ、君も試験受けるのなら前会った時に教えてくれればよかったのに♠」

(前に会った時っていつ!?ってゆーかあんたみたいな危険人物は)初対面だ」



 って、あーーーー!!!

 緊張して最後の方だけつい口に出しちまったーーー!!

 この変態にタメ口きいちまったよーーー(涙)



「初対面だなんてひどいな〜♣こないだ会ったばかりじゃないか、クロロ♥」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」



 クロロ?

 クロロって、もしかして幻影旅団団長のクロロ?


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私の名はだ。クロロという名ではない」



 あああああああ・・・・・・・・・・・、驚きと緊張で口調が固いよぅ

 ってかヒソカは私のどこをどう見てそんな勘違いをしてるんですか!?

 私と団長の共通項なんて黒髪黒目の美形で黒いコート着用ってだけで・・・・・・あ、もしかして目、悪い?



?偽名じゃなく?」

(この世界に)生まれてこれまで偽名は使ったことはない」

「んー?」



 ずずいっと鼻がくっつきそうになるほど顔を近づけられ、まじまじと見つめられる。

 思わず後ずさりしそうになったけど、よくよく考えれば原作キャラをこんな間近で見れるなんて今後ないだろうと考えた私は、逆にヒソカをじっくり観察することに。



(おおぅ、奇抜なメイクで隠れてるけどすっげー美形だな、ヒソカって)



 昔原作を読んだ時も思ったけど、なんでこんなピエロメイクに拘ってるんだろう?

 まぁ、でも変態だけど美形ってのは漫画のキャラ設定としてはよくあるパターンだから、深く突っ込まないほうがいいのかな?

 ってか、私今見定められてる?

 人相を確認するには随分時間が長いよ。


 それにこれだけ近かったらどんだけ目が悪くても分るだろうに・・・・・・・



「前髪、上げてもらえる?」

「・・・・・・・・・・?」



 とりあえず殺されそうな気配はないけど、内心でビクビクしつつ言われたとおり前髪をかきあげた。



「へぇ、どうやら本当に人違いだったみたいだ♠」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「それにしても驚いた♦ 世界に似た人間は3人いるって、本当なんだねぇ♥」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(似てる・・・・・・?それは)私の顔が?」

「うん♥ もうそっくり♥」



 ちょ、え、もしかして目が悪いとかそんなわけなくて、本当に私の顔が、幻影旅団の団長と・・・そっくり?

 えぇぇええぇええぇえええええええええええ!?!?!?!?


 そ、そりゃあ小さい時から美少年だひゃっほーい☆とか思ってたけど、なにそれ、私の容姿って団長がモデル!?

 転生トリップってだけでもありえない事象なのに、人気キャラとそっくりだなんて・・・・・・・・


 なんておいしい・・・・・・・・・・、っじゃなくて、なんて危ない現状・・・・・・・・・・・・・・・・(涙)


 確率としては滅茶苦茶低いけど、もし旅団の誰かに遭遇して今回みたいになると考えたら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下手すれば死亡フラグ?

 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、この若さで死にたくないー!!


 どうする!?

 どうするべき!?


 あ、顔隠せばいいのか!


 そうだそうだ。

 髪にパーマ当てるとか染めるとかカラコン入れるとか、整形はしたくないからとりあえずはぱっと見の印象を変えれば・・・・・・・・・・・・大丈夫かな?




 なんて内心でどえらく混乱していたら、なにか嫌な予感がして自然に体が動いた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いきなり、なにをする(んですかーーー!?!?)



 ぎゃーーっす!!

 心臓バックバックいってるーーー!!


 ここここここの変態、いきなりトランプ投げてきやがったよ(前世の)おかーさーんっ!!!


 しかも至近距離!


 言葉も途中で裏返りそうになったのはどうにか途中で止めれたけど、ビクついた反動でまた精孔が開いちゃったから周りの人すんごくドン引き。

 ただやっぱりヒソカだけはすんごく楽しそうな笑顔で、ぱらぱと手の中でトランプを遊ばしてる。



「へぇ、受け止められたんだ♥ こんな至近距離だったってのに、顔だけじゃなくて実力もそっくりだよ♥」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 ざわざわとうごめくオーラは私のビビった感情を表してるかのよう。

 でもどうにかこうにかトランプを受け止められたのは、手加減してくれたのかな?

 だけど手加減されたそれを受け止めただけで実力までそっくりだなんて、嫌な買い被りしないでほしい。


 たぶんもう少し早かったら受け止められなかったし、至近距離で対応できたのはハンゾーと手合わせ中に似たようなことを何度もしたからだし・・・・・。



 逃げきる確率上げるために反射神経鍛えといてよかったーーーーー!!!!



「・・・・・・・・・今回の試験、楽しくなりそうだ♥」

「こういうことは、嫌いだ(だからもうしないでお願いしますーーー!!!)

「くくくく、そう煽らないでくれよ、抑えきれなくなるだろ?」

「我慢も時には必要だ(ってゆーか話かみ合ってないっすヒソカさーーーん!!!)

「そうだねぇ、今ここで殺り合っちゃったらいろいろと面倒だ♣」

(やりあうって何!?やりあうってぇーーー!?お願いだから危険発言やめてーー!!ってゆーか、見られてるから!試験官見てるから!)

「こんなところで失格だなんて言われたら困るからね、うん、仕方がない♠ ボクはヒソカっていうんだ♦ またね、♥」



 なんか一人で完結したのか今までの絡みがウソみたいにあっさり引いていくヒソカ。

 え、なに?


 失格が困る?

 あ、私が試験官のほうを見たから読み取ってくれたのか?


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・え、意外と空気読める?






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 なんだか酷く戸惑った様子の声が聞こえ、振り返ったら難しい顔をしたハンゾーが。



(・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでそんな離れて・・・・・・・・・・・あ、オーラ出しっぱなしだった!!)



 慌ててうごめいてたオーラを通常の一般人みたいに整えたら、ほっとしたように息を吐くハンゾー。

 いやー、すまんすまん。



「・・・・・・・・・・・さっきのやつ、なんなんだいったい」

「分らない。・・・・私が知人に似ていたから間違えたと言っていたが・・・・・・・・いい迷惑だ」



 今回のことでどれだけ寿命が縮まったか……。



「ハンゾー、試験中あいつにだけは近づくな。危険だ」

「あ、ああ、それはさっきのやり取り見ればじゅーぶん分かったけどよ・・・・・・・・・お前は大丈夫か?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(だいじょばないっす)



 なんて言えないから苦笑だけ返したら、また難しい顔になったハンゾー。



(はぁ、試験まだ始まってもいないのにすっごく疲れた)



「しばらく、休む」

「あ、ああ」



 歩くだけで割れる人垣。

 それに眉をよせ不満もあらわに壁まで移動すれば、背を壁に預け腕を軽く組み目を瞑った。


 すぐそばではついてきたハンゾーが何やらし始めたのが気配で分かったけど、未だ激しく脈を打つ鼓動を元に戻すことに忙しいから気にしないことにした。














 そしてそれから私たちは、試験開始のベルが鳴るまで一言も会話することはなかった。

















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