まさかの原作主要人物との接触プラス、自分の容姿の危険性を知った私は精神的にかなり疲労を感じた。


 反則技だけど最初の試験が得意の長距離走だと知っていたから、変に気負わず休みを取れたのは幸いだったけど、ね。



 にしても…………



(レベルが7664とか・・・・・・・・なんだよその人としてあり得ない数値・・・・・・・・・・)


 先ほど接触したときに第一段階までだけど危険は全力回避スペクタクルズで見ることができたヒソカの情報。


 第一段階ならば対象のレベル、体力値、身体情報(身長体重年齢性別など)の読み取り。

 第二段階は念の系統や持ち技の種類、内容、威力、効果、弱点など、対象の内側まで踏み込んだ内容の読み取り。

 第三段階までなれば、対象の位置情報、心理グラフなどの読み取りが可能。



 まぁ二段階まではある程度はどうにかなるけど、三段階目は今のところハンゾーくらいしかいない状態。


 ヒソカの場合急な接触でビビッて条件クリアのための工程がほとんどできず、どうにかこうにか第一段階のみクリアできた現状。

 そこで判明したのは、今まで見てきた数多のステータスを大幅に上回るデータの数々。



 そりゃあここまで離れてたらあの強さとヤバさも頷ける、と思いながら同時に感じるのは、あまりにも人間離れしたその数値への畏怖。



 さっきはどうにかなったけど、もし次再びヒソカとかかわることがあったら命がどうなるかは分らない。

 そこまで桁違い。




 …………途中で試験落ちて姿くらまそうかな………。






そして始まる仮初の物語








 広い空間に響き渡るベルの音に、今まで閉じていた目を開け周囲を伺えば、丁度壁の窪みから試験官が現れたところだった。



「ただ今をもって受付時間を終了致します」



 素晴らしいカイゼル髭の紳士は、かつて漫画で見た姿そのもの。



(あれくらい旅団の団長もインパクトあったら、自分の容姿に気づけたかもしれなかったのになぁ・・・・・)



 おもわず考えることは、あきらかに八つ当たりな考え。


 小さくため息ひとつ。

 壁に預けていた背を浮かせ、わずかにずれた眼鏡を中指で押し上げ視線を向ける先は、はるか遠方へと続く道の先。



、移動だとよ。行こうぜ」

「ああ」



 ぞろぞろと動き出した受験生たちに続き、私たちも同方向へ足を進める。

 初めはゆっくり、だけど次第に早足になったそれは、気づけばかけ足と呼べる速さへと変わって行く。


 戸惑いにざわめき始める周囲。

 だけどそのざわめきの中、大声でもないのにはっきりと響いてきた声は、先頭を走る紳士のもの。



「申し遅れましたが私、一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場へ案内いたします」



 さらっと言ってのけられた事実に、受検者たちは驚いた様子だ。

 まぁ、私も情報がなければ彼らと同じ反応だったろうなと考え、小さく苦笑。



「二次試験会場まで私についてくること、これが一次試験でございます」



「げっ、また走るのかよ・・・・」

「よかったな。ここに到着してからまだそれほどたっていない、つまり体はしっかりほぐれているぞ、ハンゾー」

「そりゃ、体力はもうほとんど回復したけどよぉ、精神的にこれきっついぜぇ?」

「私は走ることは特に苦ではないからな、まぁ精神を鍛えるとでも思えばいいさ」

「・・・・・・・・・・・はぁ、気が重い」



 大きなため息をつきながら肩を落とすハンゾーに思わず笑みが出る。



おいガキ汚ねーぞ!そりゃ反則じゃねーか、オイ!!



 さて意気消沈するハンゾーをどう励ましてやろうかと考え始めた瞬間、結構近くから聞こえた大声にビクゥ、と内心で盛大にビビる私。

 外面だけは前世から身につけていたポーカーフェイスというスキルでどうにか誤魔化せたから、そのまま何食わぬ顔で、でも内心ではびくびくしながら声が聞こえたほうへと振り返れば・・・・



(・・・・・・・・・・あ、あれってもしかして、主人公組・・・・・・・・・・・・・・?)



 黒髪の少年に、銀髪の少年。

 そしてスーツにサングラスの老け顔に金髪美人。


 単品でいたらちょっと分からなかったかもしれないけど、こう4人揃っていれば朧気な記憶しか残ってなくてもはっきり分かる。



(って、近っ)



 さっぱり周りを気にしてなかったから気付かなかったけど、四人組は私のほぼ真後ろ。

 このまま彼らのほうを向いていて下手にかかわれば夢小説ルート(別名・ご都合主義の原作介入ルート)で危険と判断し、それとなくハンゾーを促し彼らから離れることに。



「あ?どうしたんだよ」

「一次試験が長時間耐久マラソンならばいずれ周囲の熱気で暑苦しくなる。そして鈍い連中が固まった中を駆け抜けるとなるといらん体力を消耗するだろう?」

「つまりは、後から涼しい思いをして走るため先頭付近に移動するってことか?」

「理解が早くて助かる」



 なんてそれらしい理由を述べて納得させれば、ハンゾーも賛同し主人公組から離れることに成功。




 よし、あとはこのまま最終試験までどうにか接触しないよう頑張るとしよう。














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