(原作の知識で微妙に知ってはいたけど・・・・・・)
「でかいな・・・・」
「てゆーか、他に捕獲しやすそうなサイズの豚はいねーのかよ・・・!」
二次試験が始まり数分。
湿原と違って大型の動物は豚しかいないようで、広い森林公園の中連中がどこにいるのか少し感覚を研ぎ澄ませればすぐに分かった。
だからその気配を辿って他の受験生よりいち早く遭遇できたのだけど、その・・・・豚が思った以上にでかかった。
(どどどど、どうしよう・・・・・っ!私、人間の不良程度なら片手でちょいちょいってできるけど、こんなデカイのは流石に・・・・・・・!!)
再びバクバクと心臓が鳴りだした。
(弱点か何かあれば一撃でどうにかなるかもしれな・・・・・・・・って、そういえば原作でそんなシーンあった!そうだあった!思い出せ私ー!!ちょっとまじで記憶霞んじゃってるけど、やればできる子頑張れ努力の子ーーーー!!!)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・額、だ」
「あ?」
「生き物は長い年月をかけ己が弱点を克服してく・・・・・・あの無駄にでかい鼻は
(たしか)
そのためのもの、つまり」
「その裏っ側の眉間、もしくはその周辺が弱点ってことか?」
「百聞は一見にしかず。ってわけで、行ってこい、ハゲゾー。そして私の分も捕ってこい」
「ハゲじゃねぇっつーの!!てか俺が行くのかよ!?おまえの分も!?」
「頭脳労働私、肉体労働おまえ。どうだ、しっかり役割分担できてるだろ?」
「要はサボリたいだけだろうがお前!!」
「もともと来る気のなかった試験にここまで真剣に取り組んでやってるんだ、ありがたいとは思わないのか?」
「ぬぐっ……!!」
悔しそうに地団太を踏むハンゾーを横目に、にやにやと笑みを浮かべる私。
「・・・っ今回のことでチャラだからな!!くそっ、おぼえてろ!!」
「そんな余分な記憶領域はないな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・のど腐れ野郎ーー!!」
お前はボキャブラリーが本当に貧相だな、と私が言い終わる前に走り去っていくハンゾー。
ちなみに向かった先は豚の群れ。
(これで私の命の危険は回避された、と)
あとはハンゾーが豚を捕って帰るのを待つのみ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・丸焼きの準備でもしておくか」
豚の丸焼きって言ったから素直にそのまま丸っと焼いてみた
「あ〜食った食った、もーお腹いっぱい!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そりゃあ、71頭ものビッグな豚食ったらお腹いっぱいにもなるっしょ。
まぁ、たくさんの食べ物をたくさん食べられるように特化した何らかの能力なんだろうけど、ね。
なんて満腹でご満悦のでかい試験官を見て考えていたら、やっぱりというか、おいおいと呆れるというか、もう一人の試験官からの視線を感じた。
「
・・・・・・・・・・・おい、やっぱあの試験官、お前に気があるみてーだぞ
」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり、そう、か?」
「
本人それとなく平静にふるまってるみたいだがー、ありゃーお前に一目ぼれした連中とおんなじ反応だぜ
」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「
どーすんだぁ?あの試験官はお遊びの範囲越えた感情っぽいぜぇ〜
」
「・・・・・・・・・・・・・・・
ひとまず、私は今お前を蹴とばしたいってことだけは確かだ
」
「!!!」
ぐだぐだと煩いはげにさすがにイラッときた。
なので苛立ちを晴らすべくちょっと声を低くして横目で睨みつけたら、一気にずざざと後退りして離れていくハンゾー。
追いかけてって蹴り上げてやろうかと思ったけど、さすがにそれは子供っぽいかと諦める。
(・・・・・・・・・ま、あの試験官は恰好はあんなだけど性格は純情系っぽいから夜這いとかしかけてこなさそうなのが救い・・・・・か?)
なんて意味のない慰めを自分に掛け、気を取り戻して再び視線を試験官のほうへ向ければ、どうやら己の職分を思い出したらしい姿がそこに。
「あ、あたしはブハラと違ってカラ党よ!審査も厳しく行くからね!!」
なんだか舞台女優のようにきびきびしてますね、お嬢さん。
「二次試験後半、あたしのメニューは・・・・・・オスシよ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、ハンゾーがガッツポーズしてる。
室内の用意されたキッチンを前に、困惑の表情が隠せない受験生の方々。
そしてそんな受験生を横目に、抑えきれない笑みで変な顔になっているバカ・ハゲゾー。
(さぁーて、私はどうするかな・・・・・・・・・・・)
一応、これでも元女な私は料理もそこそこできる。
として生まれ変わってからも、実はこそこそ作っていたから、家庭料理的なものならさっくり作れる。
でもなぁ、寿司って魚捌くだろ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・私、捌けないんだよね。
別に寿司ネタって魚だけじゃないけど、私みたいな素人が作ったところで美食ハンターが満足する品なんて作れやしない。
ていうかなんで寿司作りが試験?
豚狩りなら身体能力を見るための試験だと理解できる。
でも寿司作りは一体・・・・・・・・・・・・・・・あ、もしかして、まったく知らない料理をこの場にある道具と試験官の言動から推測する推理力と洞察力のテスト・・・・・・?
・・・・・・・・・・・武骨者な連中には繊細過ぎるテストじゃないの、これ。
それに俺とハンゾーみたいに料理を知ってる人がいたら全く意味がない気もするし。
・・・・・・・・・・・・運も実力のうちってやつ?
(とりあえず、さっさとクリアしよう)
ハンゾーは放っておいても問題ないだろうし、あとの受験生はどうにか頑張ればいい。
なのでこっそりと建物から出た私は、ひとまず鳥の巣を探しに森の中へと足を進めた。
んで、あっさりと卵ゲッツ。
戻ってみれば何人かが魚捌き始めてて驚いたけど、大多数の受験生の姿が見えないことからどこかの阿呆が寿司ネタについて知っててばらしたりしちゃったんだろうと予測。
まぁ、寿司ネタが魚オンリーなんて決まり、ないわけだから気にしない。
適当な場所を陣取り、取ってきた卵を湯で始めじっくり待つこと約10分。
茹で上がった卵を水で冷ましてカラをむいてる最中に、ふと疑問。
(あれ?何で私ゆで卵作ってるんだ・・・・・・・・・・・・?)
・・・・・・・・・・・・・・・・・普通寿司で卵っつったら出し巻きなのに・・・・・・・・・・・・・私は何故ゆで卵を?
えええええええええええええええええええ??????????
とか内心すっげぇ疑問符飛ばしてたら、ふと聞こえてきたざわめき。
うん?
なになに?
キサマら素人がカタチだけマネたって天と地ほど味は違うんだよって?
んん??
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この試験って味審査なわけ?
えー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょ、普通に無理だからー。
私が出せる味って普通の家庭のお味ってやつだから、プロの料理人納得させる味なんて出せないってー。
しかも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(なぜか私はゆで卵作ってるし・・・・・・・・・・・・)
ちらりと見下ろした先はカラまでむき終わったつやつやの卵。
うーん、と首をかしげ、調味料がしまってあるらしい棚を見回して・・・・・・・・・・・・マヨネーズを手に取った。
んでゆで卵を小さな器の中に突っ込み、マヨをぶにににに〜。
そしたらスプーンでごすごす潰し、塩コショウで若干の味付け。
(あとはパンがあれば最高・・・・・・・・・・・・・なんだけど、ないからご飯で代用するか)
用意されていたご飯を適当な量を手に取り、薄くひらぺったく延ばしてフライパンで焦げ目が少しつくまで焼く。
それをもう一つ用意し、マヨ卵をはさんで簡易サンドイッチの完成ー。
なーんてやっていたら、
「二次試験後半の料理審査、合格者はゼロよ!!」
試験終わっちゃったぜ・・・・・・・・・。
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