絶望した。
運命の女神とやら、女だからと遠慮はしない。
叩き切ってやるからそこへなおれ。
てゆーか、私が何をした!?
無理やりつれてこられて嫌々試験を受けていたのがいけなかったのか!?
どうして、どうっしてっ・・・・・・・・・っ!!
「さん!!」
「お、さっきぶりだな!」
「あれ、二人の知り合い?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
目をキラキラと輝かせ、犬ならば尻尾を千切れんばかりに振る様子で駆け寄ってきたクラピカ。
どうやら相当気が合ったのか、昨日分かれて今朝合流する間にハンゾーと心☆友になったらしい、老け顔レオリオ。
きょとんとした顔の、純粋無垢な雰囲気が見て取れる少年、ゴン。
どういうわけか警戒心たっぷりに部屋の隅からこっちを睨み付けて来る、いろいろ危険かもしれない少年、キルア。
何があっても、全力で彼らとはかかわらないと決めていた主人公組が、すぐそこに。
第三次試験。
トリックタワー攻略『多数決の道』。
何の因果か、私は彼ら主人公組と行動せねばならなくなった・・・・・・・・・・・・・。
泣いても良いですか?
一晩ぐっすりと眠った私は、翌日すっきりさっぱりと目が覚めた。
慣れない海外での朝だったけど、体内時計はさほどの狂いもない。
昔からの習慣で、早朝5時に起床。
流石に飛行船内のためランニングなどはできないけれど、適当に開いたスペースで軽いストレッチから始め、小一時間ほど鍛錬を積みシャワーを浴びた。
その後は食堂のキッチンと食材を借り、手製の朝食を。
朝日を拝みながら何故だかあった日本茶を啜り、さて試験開始までは瞑想でもしておこうかと今後の予定を組み立てていたら、現れた彼の女性試験官。
この手の女性にしては想定していたよりずっと早く行動に移したことに内心少しビックリしていたら、手渡された弁当箱。
「あ、ぁ朝ごはんっ作ったらちょっと作り過ぎちゃったのっ!ょよ、よかったら次の試験のときにでもっ食べて頂戴っ!」
どもり過ぎだぜお嬢さん。
とか心で突っ込みながらも、表面上は長年の癖で王子様スマイル。
「ありがとうございます」
「つっっっっ次の試験も頑張ってねっ!それじゃっ!!」
そういうや否や、すさまじいスピードで視界からいなくなった彼女の後姿を見送りながら、思わずくすりと笑みがこぼれた。
(・・・・・・・・・・・・・・・うぶな感じで、可愛い行動だよな)
思いのほかあの試験官で癒された事実に驚きつつ、いただいたお弁当箱は大事に荷物の中へ。
(美食ハンター手製の弁当・・・・・・・楽しみだな)
悪くないかもしれない。
次また接触してきたら、少しはそれなりの対応しようかな、と思えた朝の出来事。
その後ハンゾーと合流し、お昼前に飛行船がたどり着いた先は次の試験会場。
豆っぽい案内係の人から試験の概要を説明され、かなり高い塔の天辺に私達は置いていかれた。
「どうする。ここ、俺なら簡単に外壁伝って降りていけるけど」
「馬鹿。よく見ろ下を。少々面倒な鳥がいるだろうが」
「あ」
とか言ってたら、マジで外壁を降りていく受験生が鳥に美味しく頂かれているのが見えて、ハンゾーが少し青ざめた。
「私達二人で行けばアレくらいどうとでもなるが、相当体力と根気、使うぞ?」
「・・・・・・・・・別の道探すか」
「ああ。それが懸命だな」
雲より高い、円錐の塔。
周囲にはなにもなく、だけど怪鳥(人喰い)がこれ見よがしに待ち構えている側面。
塔、と言ったくせに外壁には穴一つ泣く、建物の継ぎ目しか確認できない。
この条件下で考えられる降下方法は、数人で協力の下、怪鳥を相手にしつつ外壁を伝い降りること。
塔の天井をどうにか破壊するなりなんなりで、塔内部へ進入し降下すること。
以上2パターン。
・・・・・・・・・・悲しいことに、私の記憶はすでに当てにならない。
大まかな流れは覚えてるし、おそらく現状はその流れに沿っているものと推測できる。
けれど私の記憶力は残念な結果しかもたらさない。
つーか、20年以上も前のことなんてそうすんなり思い出せるかってんだ。
「・・・・・・・・・・・・・」
びゅうびゅうと、高所なだけあって風が強い。
その風に煽らればたばたとコートがはためくのを僅かにうっとおしいと思いながらも、思案する。
(入口・・・・・・・・何もないわけはない。おそらく何らかの形で下へと続く道が存在してるはずだ・・・・・・・)
でも大っぴらな物じゃないと思う。
だって、受験者を減らすのが試験官の役目だ。
大きな、誰かが見つけたらほかの受験者にもあっさり分かるような出口は、まずないだろう。
しかしたった一つってことも無いだろう。
何故なら、ここの屋上は結構な面積がある。
なにせ飛行船が止まっても十分すぎる余裕がある面積だ。
その中にたった一つの隠し扉じゃぁ、合格者はほとんどあるまい。
仮に見つけられたとしても、その先の道如何によっては受験生が集団で合格することも可能だし。
ということから考えるに、隠し扉は複数ある。
で、そこをくぐれるのはおそらく一人一箇所限り。
周囲のブロックの形から、どんでん返し式に近いものが可能性として高い、と。
こつ、こつ、と。
風に邪魔され小さく聞こえる己の足音に耳を澄ませながら歩いていれば、ある箇所で不意に足音が変わった。
「・・・・・・・・・・・」
視線をめぐらせて見れば、人一人が通れるくらいの幅の、細長いブロックの床がそこに。
ほんの少し足に力を込めてみれば、下へと沈み込む感触。
(・・・・・・・・見つけた)
ちら、と視線を上げハンゾーのほうへと振り返れば、同じく隠し扉を見つけたようだ。
ここで、互いにその場から離れるのは、馬鹿げてる。
もし今見つけた隠し扉から離れ、ほかの受験生に取られてしまい、そこを使えなくなってしまえば意味が無い。
それに、隠し扉が受験生全員分用意されているとも限らないし。
だから、ここはそれぞれ己の見つけた道を行くのが上策。
「・・・・・・・・・・・」
じゃあな、と意味を込め片手を挙げれば、同じしぐさが返ってきた。
普段馬鹿げてるけど、いざとなればちゃんとしっかりできるあの馬鹿。
私がいないからって、私といるときみたいに気を抜くんじゃねーぞ。
なんて思いながら、私は足元の扉へと身を滑り込ませた。
――――――――――ここで、一番最初に戻る。
(・・・・・・・・・・・・なんで、こんな所で主人公組と一緒になるんだろ・・・・・・)
中身どんより、外側さわやか。
今の私を表すのなら、そんな感じ。
「私は・。地上へたどり着くまで、道中よろしく頼む」
「俺はゴン・フリークス!よろしくね、!」
「・・・・・・・・・」
「あ、なんでキルアそんなところいるのー?」
「いいだろ、別に」
「?」
私から一番離れた位置から動こうとしないキルアに、不思議そうな顔をするゴン。
そんな二人の様子なんてまったく目に入ってない様子の、笑顔振りまき放題なクラピカ。
そして残るレオリオは・・・・・・・・・・
「多数決の道ー?なんだそりゃ」
しっかりこの部屋の現状を把握していた。
「ここからゴールである地上まで、そこにあるタイマーにつけられたボタンで多数決をとり、幾重にも分かれたルートをここにいる全員で辿る。それがこの部屋のルールのようだよ、レオリオ」
「お、さっすがー」
「さすが?」
「あー、昨日ハンゾーから色々聞いててな、お前さんはかなり頭が切れるから頼りがいあるって、よ」
「ふぅん、あいつそんなことを・・・・・・・・」
「いやいや、にしてもそんな頼れると一緒になれるとは、幸先いいねぇ!」
はっはっはと、やたら上機嫌に笑うレオリオ。
「図々しいぞレオリオっ!」
「あいたっ!」
何が気に障ったのか、笑うレオリオのケツを蹴り上げるクラピカの態度に首をかしげた。
・・・・・・・・・・・っていうか、
(・・・・・・・ん?あれ、これってもしかして・・・・・・・・・・・・・・・・・っは!!)
唐突に、脳内に閃く魅惑の図式。
(そうだ、そうだこれこそ・・・・・・っ、マジもんのレオ×クラ・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!)
最近知り合ったばかりの私にやたら気を許すレオリオを『浮気者!』な感じに嫉妬するクラピカ・・・・!!
わぉ、これはよくよく考えたら美味しい状況!?!
主人公組のあれそれこれを間近で見れるってのは今後無いかもしれない、っていうか関わる気無いからまず無い。
だけどこの状況だったらよっぽどのことが無けりゃ私の命は危機に晒されない。
今の状態じゃ詳しい彼らのくっつき具合はわからないけど、もういっそこのチャンスを最大限に生かして見極めてやる!!
そして忘れちゃいけない、もう一方!
なんだかんだで出来た同い年の友達を、パッとでの男(私)に取られやしないかと気が気じゃないって考えれば、キルアのあの態度!
これはもう、自分の気持ちを認識する一歩手前!
それすなわち・・・・・
(いよっしゃ、きたーっ!!リアゲイでもマジホモでもこの二組だったらばっちこーい!!)
レオ×クラに、キル×ゴン。
リバでもなんでも美味しくいただける私にとって、ある意味これは萌の極み!!
主人公組みにかかわったらマジやべぇとか考えてたけど、もうここまでくればどうしようもない。
こうなったらトリックタワー攻略まで、とことんネタを頂いて脳内ログを更新してやる!!
ふはははははははははっ!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
そーいやこのルートってなんかもう一人いなかったけ?
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