ウソップが合流してすぐ目覚めたルフィに乗船の旨を伝えれば、快い返事がもらえて上々。 一応ウソップを助けた時の本来の姿である俺を弟として、兄弟二人、まとめて乗せてくれるとは有り難い。 (少し疲れるけど影分身をすればいいしな) スタミナがないけれど、影分身は作りだすとき疲れるだけだからまだ大丈夫。 もう少ししたら隙を見て分身して合流させよう。 なんて今後の計画を立てている間に、事態が思った以上に早く進んでいた。 俺との話が終われば、死んだはずのウソップがナミに助けられたという事実。 もしかしてナミが魚人海賊団(名前そのままだよね)にいるのは理由があるかも。 そんなことを彼らが話していれば、林の中に潜む気配が二つと、ナミが向かった先からこっちへと誰かが来る気配が一つ。 林の中のは、額当てしてた人とジョニーって呼ばれてた二人。 どういうわけで戻ってきたかは知らないけど、特に害はないだろうと判断して放置。 それでもう一方は、どうやらナミのお姉さんらしい。 「お願いだからこれ以上この村に係らないで。いきさつは全て話すから、大人しくこの島を出な」 ・・・・・・・・・・いや、だから大人しく出ていけるような様子じゃないからここにいるんだってば。 小賢しい連中の考える事はだいたい一緒 聞く気がないらしく散歩に行ったルフィを見送って始まった昔語りは、まぁ、ある程度は想定内だった。 要約するとこんな感じ。 → ある日唐突に現れた魚人海賊団。『この島は俺の支配下だ』宣言をし、島民からお金を徴収。 → 貧乏だったナミの家族はなんだかんだあって子供二人分を払い、払えなかった母親はその場で銃殺。 → 腕のいい測量士を求めていた魚人たちは、たまたま見つけた海図がナミによるものと知り、即勧誘(という名の誘拐)。 → 一億ベリー(この世界の通貨がベリーと判明)で村を売り渡すことと引き換えに、ナミは魚人海賊団へ入団。 → そして現在に至る。 武力による恐怖政治、よく聞く話だ。 木の葉にいたときにも、とある国が独裁国家として民に圧制を敷いているとか、狡賢い手で不当労働を強制させていたとかよくあった。 そしてその解決法として、俺たち忍へ暗殺を頼む。 文字通り誰にも知られることなく暗殺したり、場合によっては惨たらしい苦痛を与えたうえで殺したり、依頼者の要望は様々。 世の中、綺麗事なんてごく僅かだ。 「わずか10歳だったナミがあの絶望から一人で戦い生き抜く決断を下す事が、どれほど辛い選択だったかわかる?」 甘いよ。 忍の世界で10歳なんて、十分に戦力だ。 現に俺は8歳だし。 でもまぁ、一般人の感覚でいえば十分に若いか? 現にその境遇に同情した様子のウソップに、憤慨するサンジ。 けれどナミのお姉さんは・・・・ノジコさんは、彼らが騒ぎを起こすことでナミが魚人たちに疑われないかが心配らしい。 だから帰れ、と。 (そもそも、そんな経緯で仲間にしたナミを魚人たちが心底信頼しているなんて、思えないんだけど) 信用も同じく。 たとえ『約束』を守ったとして、口約束のようだし、そんなものいくらでも抜け道がある。 書面にし、ありとあらゆる可能性を吟味して互いに納得した『誓約』ならまだしも。 「えーと、ノジコさん?」 「・・・・・・・なによ」 「アーロンて魚人は、信頼できる相手?」 「・・・・・・・・・・」 「いくら約束したからと言って、全面的に信用、出来る相手?」 「・・・・・・・・・・っそんなの!」 「おい、っ」 唐突に口を開いた俺を訝しげに見返してくるノジコさん。 何をいきなり言い出すんだと割ってきたウソップを制し、視線を彼女へと。 「今の話を聞いた限り、『約束』をしたのはアーロンだけ。つまり彼の部下までその『約束』を交わしたわけではない」 「「「!!」」」 「アーロン自身は『約束』を破らないかもしれない。けれど他の魚人は?もしくはまったくの第三者が、その貯め込んだお金を奪ったりしたら?」 「そんな・・・・・っ!!」 「これは仮定の話だけど、ナミさんが貯め込んでいる財産を『盗品』とし、政府がそれを所持者不明の為『回収』するとか、ね」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ナミっ!!!」 今の仮定は、意地汚い連中が国の上層部と組んでやらかす手口でよくあるパターン。 だからただの仮定としてそう話せば、どうやらそれとなく心当たりがあるようで踵を返し走り出したノジコさん。 「・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・よくそこまで思いつくな、あんた」 「・・・・・・・卑劣な考えを持つ連中なんて、だいたい似た行動パターンなんだよ」 思い出すだけで不快になる。 「聞く限りアーロンはそこそこ頭のまわるやつだ。だけど詰めが甘い」 「・・・・というと?」 「・・・・・・・・俺のような全くの他人に指摘されただけで、あんなにもあっさり納得されるほどの『信用』を島民に持たれていない。俺が仮にアーロンの立場なら、もう少しうまく立ち回れる」 「・・・・・・・・・・・・・・アンタ本当に、何者なんだ?」 「迷子」 「「「はっ?」」」 あ、ゾロの狸寝入りが解けた。 「いや、実はね、 「・・・・・・・難破したとか?」 「難破のほうがまだ良かった・・・・・・・木の葉の里って、あんたら知ってる?」 「コノハの里?」 「いや・・・・・・・・聞いたこともないな」 「コノハねぇ・・・・・・・・・・」 「知らないだろ?俺も、コノミ諸島とか 「 ・・・・・・・・・やばい、『 ・・・・・・・・いや、もうこの際だ、その『常識』が適用されないような僻地からの迷子ってことでいいや。 それにうまい事質問の意図もはぐらかせたし。 「まぁとりあえず、故郷へ戻る為の一歩として貸せる手は出来る範囲で貸すよ。・・・・・・・・・戦うんだろ?」 「あー・・・船長によるが、この様子だと多分、な・・・・・・・・」 なんて話してたら村のほうから銃声が。 しかも一度や二度じゃない、人を害するには十分の数。 島民は魚人により武器の所持が認められていない。 魚人はよほど己等の力に自信があるのか武器という武器を持っていなかったように思える。 ということは、 「おいおいおいおい、もしかして本当にが言ったようになったのか!?」 「ナミさんとお姉さまが危ない!」 「あっちは確かルフィが行ってなかったか?」 三人が立ち上がり、林に潜んでいた二人は村とは逆方向へ。 林の二人が気にならないでもなかったけど、あの手の人間は大抵生き残るタイプだから大丈夫だろう。 というか、そこまで面倒みれる余裕がないし。 (・・・・・・・・・・・・・思ったより事態は迫っているのか・・・・・・・・) |